「なごり雪」by かぐや姫,イルカ.名曲にはいつも名編曲の不思議
伊勢正三と石川鷹彦の話が続いているので,極めつきの曲,しかも日本フォーク界においての極めつけの曲の話をしましょう.
なごり雪.
中年以上の人は皆知っている,なごり雪.イルカの歌で有名ですよね.
この曲は最初,フォークグループ「かぐや姫」のアルバム「三階建ての詩」で,作詞作曲の伊勢正三が歌いました.これがその曲.イルカが歌ったメロディと少し違うんですよ.
編曲と,リードギターを弾いているのが石川鷹彦.石川鷹彦は数え切れない程,有名な曲の編曲をし,ギターを弾き,リードギターを弾いていますが,その中でも,神がかり的ではないかと私が思っているのがこの演奏です.歌を引き立てるように弾いているので,気付きにくいかもしれませんが,本人でも別の名演はできても,同じ名演はできないと思われるような演奏です.
この後,イルカが1975年に出したアルバム「夢の人」の中で歌ったのが次のバージョン.編曲は石川鷹彦が担当.その後ライブアルバム(1976年)でも収録されています.ライブアルバムの演奏に最も近いのがこの演奏.リードギターを弾いているのが,若い石川鷹彦.ギターは普通のギターではなくて,ドブロギターという,アメリカのブルース,カントリーで使われる特別なギターを弾いています.金属板が表についていて,独特の音がします.歌の前半は,ハーモニックスという奏法を多用した,特別な弾き方をしています.
こちらは珍しいバージョン,歌はイルカ,作者の伊勢正三がバックでリードギターを弾いている.アレンジは,アルバム「夢の人」に近い.
さて,皆さんがよく知っている「なごり雪」はこちら.アレンジを松任谷正隆が担当しています.シングル盤で1976年発売.松任谷正隆は松任谷由実(旧姓名 荒井由美)の旦那さん.
冒頭のイントロが非常に印象的ですよね.ピアノとエレクトリックピアノ,そしてベースの微妙なブレンド.雪を非常にうまく表現しています.松任谷正隆の才能がこのわずかの数小節に凝縮されています.
世の不思議.名曲には名編曲が付く.名編曲が付いていなかったら,名曲と言われなかったのかもしれない.