どうして日本からシステム系の論文が著名国際会議に通らないのか?

ゼミで,学生さんがシステム系の著名国際会議の論文紹介をするのを聞きながら,思ったこと.

まずイントロのストーリを聞いた段階でこのネタOKと思えなくてはいけない.読み手の心を捉えていること.その先は大体想像が付くから読まなくて結構,読みたくない,は駄目.その先が気になるので読みたいと思わせなくてはいけない.

実装は奇をてらわなくてもいいが,着実に,やれることはすべてやってあること.評価もやるべきことをすべてやっていて,goodな性能が出ていること.これができるためには,研究構想の段階で,goodな性能が出るような設計,実装法,実装環境をうまく選択してある必要がある.イントロのストーリも,研究構想段階でどのように語るか,織り込んである必要がある.

つまり,構想の段階での洞察が非常に重要.そして,スキルの高い人が1年程度,実装,実験,論文書きに没頭することが必要.

goodな性能が必ずしもでない場合は,それを補うような魅力,例えば,今までにない斬新なアイデア等が必要.システム分野は既に成熟しているので,「斬新なアイデア」を出すのは容易でないと思ったほうがよい.よって,魅力的なストーリで,かつ,goodな性能がでるように頑張るのが基本と思うのがよい.とは言いながらも,斬新なアイデア,今までは駄目もしくは廃れたと思われていたアイデアやテクニックが,技術環境の変化等により,復権を遂げる可能性もあるので,要注意.

さて,どうして日本からシステム系の論文が著名国際会議に通らないか? 

前述のことをやり遂げてきれていない.これをやり遂げるためには,システムの設計と実装について腕利きの研究者・技術者・学生が一年程度没頭することが必要.システムは一般に閉じていない.OSカーネルアーキテクチャ等の技術要素に精通している事が必要なので,それ以前の学習が必要.学習といっても,いやいやながらの学習では学びきれず,そういうことを学ぶこと,いじることが好きでないと,学びきれない*1.そして経験豊富なチームメンバーが設計・実装・議論・論文執筆をサポートすることが必要.査読経験豊富な人が内部査読をしてみて,accept!が出るようでないと無理.

*1:隣接する分野についての知識が必要ということは,他分野,例えば,数学,物理,化学,生物等の科学分野でも同様なように思える.