大滝詠一はエスプレッソだ、カプチーノだ

 大滝詠一は、カヴァーアルバム(トリビュートアルバム)がいくつも出されているが、女性ボーカルだけによるカヴァーアルバムが最近(昨年11月)、発売された。

A LONG VACATION from Ladies(初回限定盤)(DVD付)

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 期待して聞いてみたのだが、大滝詠一を聴き続けているアラフォー世代後半の私にとっては、今ひとつ物足りなさを感じるアルバムであった。Amazonの販売元の紹介文によると下記のようなコンセプトで作られているそうである。

夏全開のナイアガラ・サウンドのオリジナル盤とは趣向を変え、「女性」と「秋」をイメージしたアコースティックでジャジーサウンドに。

 確かに「秋」であり、「ジャジー」であり、アルバム全体としての統一感はある。大滝のオリジナルアルバムの逆を突いている。アイデアは悪くないのだが、個人的には今ひとつしっくりと来ない。
 大滝がロングバケーションロンバケ)で確立したサウンドは、一聴するところ、リゾートサウンドイージーリスニングサウンドであるが、その中には、大滝の濃い、情念のようなものが流れている。それを耳に心地よいストリングサウンドで覆っている。大滝は、はっぴいえんど時代も、ソロになってからの初期もアクの強いボーカリストであった。ソロの途中から、ロンバケ風のサウンドを作り出した。
 大滝のもともとのサウンドは、コーヒーに例えればエスプレッソ的である。濃くて、アクが強い。それにミルクをいれて、カプチーノのようにし、口当たりを良くし、ヒットソング、ヒットアルバムを創り上げることに成功した。

前川清井上鑑の「幸せな結末」を聞くべし

 2002年に男女混合ボーカルで、大滝ソングのカヴァーアルバム「ナイアガラで恋をして」が発売されている。

 この中の白眉の1曲は前川清井上鑑の「幸せな結末」である。他にも、BEGINの「恋するカレン」を始めとして、各ミュージシャンの持ち味を活かしながら、大滝をリスペクトしたアルバムを創る事に成功していると思う。
 大滝は、以前にも、小林旭に「熱き心に」、森進一に「冬のリヴィエラ」と、演歌歌手によい楽曲を提供して、大きな成功を収めている。

女性演歌歌手で聴きたい

 先の女性ボーカルアルバムも、坂本冬美小林幸子ら、女性演歌ボーカル陣に、各人の持ち味を活かしながら歌ってもらうと、良い味がでたのではないかと思うのだ。別のコンセプトアルバムにはなってしまうが。聴いてみたいなぁ。