電子ファイルの作成日を証明出来るか?小沢一郎氏の「確認書」

 本日1月17日、朝日新聞一面の記事「記者会見直前に作成、小沢氏公表の「確認書」」に興味深い内容を発見した。この記事のネット版は下記にある。
asahi.com(朝日新聞社):小沢氏個人の土地と疑われないよう不記載か - 社会 asahi.com(朝日新聞社):小沢氏個人の土地と疑われないよう不記載か - 社会

小沢一郎と小澤一郎

 朝日記事に下記のような記載がある。

小沢氏は07年2月20日に会見を開き、便宜上、小沢氏個人の名義で登記したにすぎないと主張し、根拠として「確認書」を示した。個人の「小澤一郎」氏が何の権利も持たず、陸山会代表の「小沢一郎」氏の指示がなければ処分や担保権の設定はできない――とする内容で、小沢氏が二つの立場で署名していた。「公私の区別をはっきりつけるための私自身の意思表明」と説明した。

 つまり小沢氏は、「小沢一郎」と「小澤一郎」という二つの名前は使い分けているようなのだ。
 Wikipedia「小沢一郎」によれば、本名は小沢一郎であるが、官報などでは小澤一郎と表記されることもある」そうである。同氏のホームページ小沢一郎となっている。人間、時として、複数の名前を必要とするものなのかもしれない。
 思えば、スティーヴンソンの小説「ジキル博士とハイド氏」の出版は1886年。人間の二面性とか、二つの名前、顔が必要となるという現象は、「近代」が人類にもたらした一つの必要性なのかもしれない。
 ちなみに、ドストエフスキーの小説「罪と罰」は1866年。マルクス資本論は1867年。
 これらの出版がほぼ同時期になされたのは、偶然とは思えず、「近代」は何かを人類にもたらしたのであろう。


 なお、拙ブログ「大滝詠一なのか、大瀧詠一なのか」で書いた大滝詠一大瀧詠一のケースは、ちょっと違うケース。彼は「ナイアガラ」と掛けたかったのだ。

電子ファイルの「真の」作成日を証明出来るか?

 コンピュータ分野の研究者として、朝日の記事で興味を惹かれたのは次の箇所だ。

 陸山会は収支報告書に、この土地の購入日を05年1月7日としており、確認書の作成日も同日付と記されていた。
 しかし、特捜部が09年3月の西松建設の違法献金事件の捜査で陸山会事務所を家宅捜索して押収したパソコンのデータを分析した結果、実際に確認書が作成されたのは小沢氏が会見した07年2月20日の直前だったことが判明。小沢氏側が会見で蓄財批判をかわすために準備した文書だった疑いが強いことがわかった。

 去年3月の捜査で押収したパソコン内のハードディスクを特捜部は分析した。そして、「実際に確認書が作成されたのは小沢氏が会見した07年2月20日の直前だったことが判明」したとしている。
 どのようにしてそれがわかったのだろう?
 最も可能性が高いのは、シンプルに、ファイルの作成日か、最終修正日と、文書ファイル内の日付記述を比較したのであろう。

 実は、ファイルの作成日や修正日を変更することはそう難しくないのであるが、小沢氏陣営側が、その方法を知らなかったり、あるいはそもそも、そういうファイル属性情報があることに気付いていなかった可能性は高い。

 しかし、OSが記録保持するファイルの作成日や修正日が、文書内の情報よりも新しいとしても、それはいくらでも変更し得るものであるから、証拠と成り得るのだろうか? 法律の専門家に聞いてみたいものである。

 仮に、ファイルの作成日、修正日が、ファイル内記載と一貫性がとれていて、ファイルの実際の作成日はそれらの情報よりも後だったとしよう。(つまり、過去に書かれていたことが偽装されていたとする)

  • 問題1:技術的にそれを見破ることはできるであろうか?
  • 問題2:また、それを禁止する技術はあるだろうか?

 問題1だが、技術的に見破れる可能性はある。例えば、ユーザによる操作がすべて記録され、それが改ざんされていないことが確認されれば、見破ることは可能であろう。逆に、そのようななことをされていれば、それを誤魔化すことはおそらく非常に困難だ。問題は「すべて記録」と「それが変更されていない」ことが確実かどうかということに集約される。
 問題2だが、ファイルの属性を一般ユーザ権限では変更できなくすることが一案だ。しかし、パソコンではしばしばユーザが管理者権限をもつ。よって、暗号等の特別な技術を使用して禁止するしかない。すぐには具体的には思い出せないが、そのような技術は研究レベルでは提案がされていたと記憶する。放送された時刻情報等を含めて、特別な方法で暗号化するような方法で。

今後...

 今後、データの検索、アーカイブ、そして、クラウド化が進行していくであろう。
 例えば、Macに組み込まれている「タイムマシン」機能は、ユーザに意識させず自動的に、ファイルの差分変化を数分おきに記録していくことができる。
 あるいはDropboxのように、ファイルのバックアップを、インターネット上のストレージに、ユーザが意識する必要なく格納していくクラウド技術も既に実用化されている。今後はもしかしたら、OSの基本機能として、クラウド技術が含まれるようになるかもしれない。そのようになると、この種の改鼠はより、簡単ではない方向になるであろう。

 仮にDropboxでバックアップされているとしよう。Dropboxは米国企業が提供するサービスであり、米国Amazon社のS3というストレージサービスを使っている。記録されるハードディスク媒体は海外にある.日本の中にハードディスクがあれば、捜査当局はハードディスクを押収できるであろうが、海外にあるデータの押収は簡単でないであろう.
 よく映画で、「危ない」お金をスイスの銀行に預けるという話が出てくる.「危ない」データを、敢えて、日本には置かず、海外に置くというアプローチが今後は出てくるかもしれない.


 ライブドア社も、Gmailを使っていたら、メールを押収されなかったかもねw。