山下達郎と大滝詠一の対談番組で知った、エルビス・プレスリーによる新パラダイム創造
:黒人R&Bと白人C&W=ロックンロール by エルビス・プレスリー
私は山下達郎のFM番組「サンデーソングブック」の愛聴者であるが、毎年この時期は最大の楽しみのプログラムが放送される。1月の第1〜2週、大滝詠一をゲストに迎えての新春放談だ。番組開始時以来ずっと続いているという。アメリカのオールデイズと呼ばれる60〜70年代のポップスミュージックや、自分たちの音楽活動をネタにマニアックな会話が延々と続く。このプログラムだけは、録音を何度も聞き返す。毎年、新しい発見、驚きがあり、楽しめる。
1月3日の放送で私にとって大きな驚きの発見があった。エルビス・プレスリーのBlue Moon of Kentucky (1954)だ。私、プレスリーをあまり聴いたことがないが、この曲は知っている。私は中学時代から米国のカントリー音楽のルーツであるブルーグラスというジャンルの音楽を聞くが、この曲、ブルーグラス音楽の創始者と言われるビル・モンローの曲として非常に有名なのだ。
YouTubeを探したら見つかった。まずは、上記「サンデーソングブック」でも放送された、エルビス・プレスリーの1954年発売バージョン。(本人動画バージョンは見つからない)
リマスターされているようで、音がとてもよい。
それから次がビル・モンローの本人動画バージョン。最初の録音は1946〜1947年だ。ブルーグラスの世界では知らない人はいないくらい有名な曲だ。最初はスローバラード風な演奏、真ん中辺りからアップテンポの演奏になる。
ボーカルのビル・モンローは、フラット・マンドリンの名手としても有名だ。フラット・マンドリンは、伝統的な「マンドリン」では裏側が円い球状であるのに対して、裏側が平面的(フラット)。ブルーグラスでマンドリンといえば、フラットマンドリンのこと。伝統的なブルーグラスは基本的に電気楽器、ドラムを使わず、もっぱら弦楽器(ギター、マンドリン、バンジョー、ベース)のみで演奏される。ブルーグラスを源流として、電気楽器(ギター、キーボード、スティールギター)、ドラムを入れて演奏されるのが、いわゆるカントリー&ウェスタン。
ここにアメリカ音楽の大きな進化の過程が見て取れる。Wikipedia「エルビス・プレスリー」には下記のように解説されている。
黒人のリズム・アンド・ブルースと白人のカントリー&ウェスタンを融合することによって、今までにない新しい音〈ロック〉を誕生させ、広めた人物として知られる。初期はアメリカ、そして世界中の若者にロックンロールによって人気を博し、後期になるとラスベガスの舞台でカントリーやゴスペル、バラードなどを歌い、万人に愛される人物となった。
プレスリー本人ではないが、当時のステージの様子を再現したと思われる映像が見つかった。
番組の中で、先輩格の大滝詠一が、山下達郎に語っている。出だしはごく少数で、フォロアーが沢山現れる。0から1への変化だ。宇宙のビッグバンのようなものだ。ビートルズはハーモニーを取り入れる革新、マイケル・ジャクソンはダンスを取り入れる革新を行ったイノベータだ。
今回の番組でプレスリーの功績がよくわかった。ロックンロール(あるいはロック)の創造だ。パラダイムシフトだ。先のプレスリーのBlue Moonからはブルーグラスが、カントリー&ウェスタンが、ブルースが、そしてロックンロールが聴こえてくる。素晴らしい。