「想定外」でも前に進もう

今日は朝から大学本部棟で会議。本部棟前でバスを下車しようとしたところ,バスの運転手さんが「すみません」とマイクで謝っている。バスの運転手さんのアナウンスは,注意は多いが,お詫びは珍しい。しかし,何を誤っているのかわからない。バスを降りると,盲人の若い女性で杖を持っている。学生さんらしき雰囲気。バスの前には,東京駅行き高速バスが止まっていた。

さて,バスの運転手さんは何を謝っていたのでしょうか?

その答は,正規と異なる位置にバスを止めて,自動ドアを開けたから。運転手は最初,停車してもすぐにはドアを開けず,何秒か待った。しかし,前のバスがすぐに動かなそうなので,ドアを開けた。バス利用者の我々にとってはよくあることである。しかし今回は,バスを乗ろうと待っていた客に盲人がいた。バス乗り場には,点字ブロックがあり,おそらく乗る場所はそこで指示されている。つまり,いつも(正規)と違うところでバスが停まったので,盲人はバスの乗車口がわからなくなってしまった。それがわかって,運転手さんは謝っていたのでした。

バスを降りて私は,上記の状況を理解。盲人の方に「バス,乗れますか」と声を掛けた。「大丈夫です,このバスは左回りですか?」と尋ねるので,「そうです」と答えると,自力で乗り込んでいきました。

「想定外」が起きると盲人の方は困ってしまうのですね。でも文句は言わない。怒る様子も全く見せない。盲人の身になってみれば,危険を伴う,危ないことなのに。普通の健常者であれば,「正規」でないことがあれば,文句を言うでしょう。「危ないじゃないか,気をつけろ」とか。おそらく盲人は,そんなことを言っていられない。想定外は珍しくない。いちいち,そんなことにつまづいていたら先に進めないし,精一杯の勘を働かせて前に歩いて行かねばならない。と,ここまで思いを馳せて,私の眼はうるうる来てしまいました。

この一文は,大学での会議を終えて,東京に向かう,つくばエクスプレスの中で書いています。ここまで書いて思ったこと。今,我々に必要なことは,前に進むこと,かもしれない。悲嘆にくれたり,エクスキューズを言い続けるだけでなく。