教科書に載るような研究をしよう

 時事ドットコムのニュース記事「突然の電話に「アンビリーバブル」=鈴木さん、花束に笑顔−北海道・ノーベル賞」によれば,鈴木氏の米国パデュー大学での恩師,故ハーバート・ブラウン教授は,「教科書に載るような研究をしなさい」と言っていたという.鈴木さんも自らも研究信条として,「重箱の隅をほじくるような研究だけはするな.新しい,誰もやっていない研究をしろ」と学生を指導してきたそうである.

 私も同感である.そして耳の痛い話でもある.ここで日本のコンピュータサイエンス最大の秘密を暴露してしまうのだが,日本人が行った同分野における研究で,世界で使われている教科書で掲載される研究は非常に少ないのだ.

 これに関して思い出した実話.米国の大学から日本の大学の数学者に,その米国大学での教員採用人事に関する問い合わせが来たそうである.問い合わせ事項は極めてシンプルだ.ある人物(日本人ではない)を採用しようとしているが,この分野の専門家であるあなたの意見を聞きたい.あなたがこの分野で教科書を書くとして,あなたはこの人物の研究について言及するか? yes or noで答えられる,極めてシンプルながら,効果的な質問だ.

 さあ,身を引き締めて,研究に励もう.