盗聴広告(DPI):ユーザの通信を収集・分析して広告を出す

 5月30日(日)の朝日朝刊に「ネット履歴まるごと広告へ利用可能に」という記事が掲載された.DPI (Deep Packet Inspection)と呼ばれる技術に関するもので,これは,エンドユーザとインターネット接続を行う,プロバイダーのところで,広告配信業者にユーザのパケット情報を「横流し」して,ユーザのインターネット上でのやりとりを分析して,ユーザごとに情報を蓄積・分析し,そのユーザが注目する確率の高い広告を配信するというものだ.

 この技術の運用に,総務省が「ゴーサイン」を出したという.

 DPIは実質上,インターネットを「盗聴」する.インターネットは,通常の電話と異なり,方式上,「盗聴」がし易い情報ネットワークだ.これはインターネットがバケツリレー式に情報を転送する方式になっていることに由来する.このバケツリレーの大部分を担当するのがインターネット・プロバイダーだ.普通のユーザは,インターネットの情報が容易に「盗聴」され得るということを知らないだろう.電話やテレビと同様,誰が何の情報を見ているか,他の人には分からないと思っているだろう.

 総務省の本件を扱う研究会は,ユーザが拒否すれば情報収集を停止する等の制度を設けるという.しかし,多くのエンドユーザは何のことか,直感的にわからないだろう.説明の仕方によるが,その内容がわかれば,拒否したい人は少なくないだろう.しかし,事情がよくわからなければ,「...ということをしますがよいですよね,はいですか?」と聞かれて,「はい」と答えてしまうだろう.

 米英では頓挫した技術だという.米国のユーザはこの種の問題に敏感だ.以前にも「ダブルクリック社問題」というのがあった.(その説明は例えば下記)

http://www.asahi-net.or.jp/~lg9h-tkg/news000306.htm

 私はDPIは問題が多い技術であり,慎重に考えるべきだと思う.