武蔵野美大 陣内ゼミの卒業制作発表会「複眼思考2010」
3月に開催された,武蔵野美術大学,陣内利博ゼミの卒業制作発表会を東京都内のart space kimura ASK?で拝見してきました.タイトルは「陣内利博プロデュース vol.5 複眼思考2010」
複眼思考とは、つまり、あのーまぁあれだ。「単眼」ではない思考だ。きっと。
「単眼」では無いということは思考に劇的な変化をもたらす。つまり思考に基づくデザインも劇的に変わってくる。なぜならば、上からも下からも左からも右からも思考するということなのだから。思考するとはつまり観察することである。上からも下からも左からも右からも観察するのである。有形無形関係なく多方向から観察するのである。
第一文が気に入りました:複眼思考とは、つまり、あのーまぁあれだ。「単眼」ではない思考だ。
ちなみに昨年の複眼思考2010の様子はこちら.
陣内利博先生の作品
まずは,陣内先生自らの作品.この展示だけでも,絵になっています.
穴の中を覗いたところ.
多角形を手作りで綺麗に貼り合わせてあります.各多角形の真ん中に穴が空いているのがミソ.また,よく見て頂くと分かりますが,各多角形は数種類の,角数が異なるものを組み合わせてあります.見事な構造,見事な造形なのです.
これは単なる置物ではありませんよ.持っているのが陣内先生.かぶりそうですよね.
そう,こうやってかぶるのです.
かぶったときも絵になっている.
不思議な感じ.
かぶると何が見えるのでしょう?
外の光源からの光がこんな風に見えます.
そう,ピンホールカメラの原理.穴の数だけ,ピンホールカメラがあり,内部の小さなスクリーンに投影されるという仕掛け.これぞ「複眼思考」.正にこのブログがテーマにしている,「構造と物語」がある.
下は以前作ったブラックバージョン.
佐藤哲至さんの作品
すぐ隣の部屋に,助手の佐藤哲至さんの作品.机の上に置かれた100円玉.
この上にノートをかざすと,あら不思議,100円玉が透けて見える.
ページの左に描かれた四角内の図形がありますよね.これが2次元バーコードの役割を果たします.机の上にカメラとプロジェクタが置かれ,2次元バーコードの内容に従って,カメラの内容を読み取りプロジェクタが表示する内容を動的に変化させます.このページは,100円玉の投影により,100円玉が透けるように見せている.
ページごとにいろいろな仕掛けがあって,楽しめます.
学生さんの作品
下記の画像,何と,1週間の間に食べたものを視覚化しているんです.
多色の同心円で描かれています.
私が感銘を受けたのは,学生,細沼千夏さんの,4年間の習作ポートフォリオ.ページをめくるたびに,本物が持つ,薫り立つ凄みを感じました.
これが細沼さんの卒業制作作品.同級生が作った物語に基づいて構成した絵.すべての部分に,物語に基づいた意味があります.
自画像もお見事.某大手ゲーム会社に就職とのこと.こういう凄腕の人達が日本の素晴らしいゲームを作っているんですね.