どうして携帯電話のSIMロック解除へ抵抗するのか?

 週刊ダイヤモンド記事「通信業界の改革を押し戻すSIMロック守旧派の弱点」によれば,ユーザが携帯端末を自由に変更できるようになる「SIMロック解除」の守旧派(つまり抵抗勢力)筆頭は,意外にもソフトバンクなのだそうである.ソフトバンクといえば,Yahoo BBや携帯事業参入など,ICT業界に「価格破壊」を持ち込んだ急進派のイメージ.それがどうして抵抗勢力たらねばならないのか.
 ドコモとソフトバンクは同じ通信方式を使っている.ドコモとソフトバンクは同じW-CDMAKDDI (Au)はCDMA2000.つまり,ドコモとソフトバンクは端末が相互互換である確率が高い.ソフトバンクは,人気のiPhoneを国内独占販売.ユーザ累計は300万人らしい.ドコモとソフトバンクを比べたとき,ドコモは通信回線の質と量で優位に立つ.今はiPhoneを使いたいユーザは望む,望まざるに関わらずソフトバンクを選ぶしかないが,SIMロック解除となれば,現在のiPhoneユーザはドコモに大きく流れる可能性がある.あるいは,ドコモユーザが端末としてiPhoneを使い始める可能性がある.この構図が,ソフトバンクを「抵抗勢力」たらしめるらしい.

 もしiPhoneがドコモでも使えるようになったら,さらに予想されることがある.Android陣営への打撃である.現在,iPhoneソフトバンクに囲い込まれているので,ドコモのユーザを使い続けたいユーザは,iPhoneのような「スマートフォン」を希望するユーザはAndroid等を選ばざるをえない(iPhoneよりもAndroid端末の方が好きというユーザもいるであろうが).iPhoneが携帯通信会社の壁を超えて来ると,スマートフォン市場の「喰い合い」を,より強力なライバルがいることを前提に戦わねばならない.よってAndroid陣営もSIMロック解除に抵抗したい可能性がある.メーカとしては,通信キャリアに縛られず,より販売マーケットが広くなるのに.

 前述の週刊ダイヤモンド記事の冒頭で「当初、総務省が予定していた米グーグルの日本法人が公聴会への出席を断った」という話が出ている.なぜ断ったのか最初がわからなかったが,上記のような考察をしてみると,Android陣営を育成したいグーグル社もSIMロック解除に抵抗という構図があるのかもしれない.

 狭い空間で長く棲息していると,広いグローバルな空間に出ていくのをためらうようになる.リスキーだから.これは,今の日本人のメンタリティ形成にも見られる現象のようにも思う.