NHKのネット配信低迷を救う法

 NHKの番組ネット配信NHKオンデマンドが低迷しているそうである.

 asahi.com「NHK、番組ネット配信低迷 収入「想定の半分以下」より引用:

NHKのテレビ番組をインターネットで有料配信する「NHKオンデマンド」が始まって12月で1年。予想したほどには利用は増えず、今年度の料金収入は当初見込んだ23億円の半分にも届かない見通しだ。無料が当たり前のネット上で有料サービスを展開する難しさが、改めて浮き彫りになった。

NHKオンデマンドは、放送済みの番組をネットで見られるようにしたサービスだ。放送翌日から約10日間配信する「見逃し番組」と、過去の名作を配信する「特選ライブラリー」の2種類がある。

料金は1番組あたり105〜315円。定額で多数の番組を見るコースもある。一部の無料配信も含めると約3千本の番組が用意されている。

 私も視聴したことがあるが,いくつもの不満がある.

  1. 1番組あたり105〜315円という価格設定は高い.見逃さねば,あるいは,自分でビデオ予約して収録をすれば無料のところ(正確にはNHK受信料を要す),30〜60分の番組でも315円を支払うのは,庶民感覚として高過ぎる.315円とは,レンタルビデオショップで,DVDを1枚借りられる値段だ.しかも2時間程度の大作映画を借りられる.家に居ながらにして見られるとはいえ,高い.
  2. 「見逃し番組」は,放送翌日から10日間のみの配信だ.どうして10日間だけなのだろう? もっと長く見られてもいいでしょう.著作権管理上の問題か.
  3. NHKは受信料をとる有料放送局だ.見逃し番組を見るのに,どうしてさらにお金を取るのだろう?

 おそらくネット上の有料動画を成功させることは容易なことではない.それは,YouTubeニコニコ動画が,未だ無料で頑張っているというか,有料化には踏み切れないことからも容易に類推できることではないか.

 拙ブログ「どうしてAmazonは赤字でもKindle本を売るのか」にも書いたように,新しい生活スタイル,すなわち,見ようとしたテレビ番組を後からネットで見る,あるいは,ビデオ録画を不要にする,というようなことを一般庶民に定着させるためには,ある程度の「出血」覚悟せねば実現できない.

 先のニュース記事によれば,今回は半分に届かない程度の収入だそうだ.23億円をすべて消費者から儲けようとするから「損」となる.Amazonのように逆に考えたらどうだろう.生活スタイルを変えさせるよう,消費者に対して「投資」するのだ.黒字運営とするのに23億円の収入を必要とするならば,例えば約半分の11億円だけを何らかの方法で儲け,残りの12億円は消費者に投資して,テレビ番組の見方の変化を促す.ネット配信が定着し,生活スタイルに溶け込んだら,儲けをちょっとずつ増やす戦略を考えればよい.

 12億円儲けるのも,消費者から直接取らなくてもよい.思い切ってポータルサイトのようにし,広告アリとする.もしNHK著作権を有する,質の高い番組を,YouTubeやニコ動のごとく,無料で見られるとしたら,国内有数のポータルサイトになるであろう.そこで,広告等で広く薄く儲ければよいのだ.NHKは生活情報を扱う番組を数多く持っている.そこにGoogle AdSenseのような広告システムを付ければよいのだ.

 NHKの質の高い番組は我が国の貴重な財産であることは間違いない.どうしてそれを眠らせておくのか.むしろ,思い切って無料公開とし,上記のように薄く広く稼ぐ道を探った方が,NHKにとっても,日本国民にとっても幸せではないかと思う.守るより,攻めるのだ.

...と思いのまま書いてきたが,おそらくNHKを縛る法律とか,民放との関係等で,簡単には行かないのでしょうね.