人類が達成したことがないミッションを我が国も達成しよう

 私は小,中,高,大,院と学生時代を高度成長時代の中で育った.漠然と,物価は上がり続けると信じていた.デフレという言葉は,インフレの対義語があるということでしか知らなかった.バブル崩壊があり,しばらくして,デフレの時代が来て今日に至るが,それでも,平和な日本であることは変わりなかった.四方を海に囲まれ,簡単には,他国が攻めてこない国.2千年に及ぶ歴史の中で,戦争に負けたことが一度しかない国.

 郵政民営化参議院で否決なので,なぜか衆議院解散とか,「刺客」とか,突如として総理大臣辞任とか,総理大臣の平均在任期間が1年程度というようなドタバタが続いても,平和だから大丈夫なんだよね,とつぶやきあえた日本.組織的テロとか,通り魔的無差別殺人とか,社会を震撼させる重大事件が発生し,人の心が病んでいるという指摘があっても,国自体は安全だと信じていた日本.

 阪神大震災のような大きな災害も,何とか,乗り越えてきた日本.

 2011年3月11日に発生した今回の大地震も,おそらくは10年,20年を掛けて乗り越えていくであろう.

 しかし3/11を境に変わったてしまったと思われることがある.

 日本は安全であるという「神話」.

 四方を海で囲まれ,しかも東半分は太平洋という大海であることは,他国からの防衛上は有利であった,

 しかし,今や我々は知ってしまった.

 自然が猛威を振るえば,四方を海で囲まれた国は,壊滅的打撃から逃れられない.マグニチュード9という地震が起きれば,国土直下型は元より,近海で発生した場合も,凄まじい津波を引き起こし,想像を絶する甚大な被害をもたらす.

 そして,原子力発電所という,人知の制御能力を超えていることが改めて分かった人工物も有している.

 しかし我々は前に進むしかない.

 災い転じて福となそう.

 米国が今日のハイテクを身につけるようになったきっかけはスプートニク・ショックだ.人類初の人工衛星ソ連に先んじられた.世界最初の有人宇宙飛行もソ連に達成された.ショックを受けた米国は,人間を月に送り,生きて帰還させるというミッションを設定し,アポロ計画として成功させた.

 インターネットもそうだ.冷戦時代,キューバ危機では1962年10月15日から13日間に渡って米ソ間の冷戦の緊張が核戦争寸前まで達した.米国は核戦争を覚悟した.その環境下で,米国本土が核攻撃を受けても壊滅しない情報ネットワーク作りを目指し,それが発展して,今日のインターネットとなった.

 危機感が,それまでは考えられなかったような創造性と団結力を引き出すのだ.

 我が国も頑張ろう.

 我が国は,震災の復興に加え,マグニチュード9の地震や,それによって引き起こされる津波が来ても壊滅しない国作りを目指さなくてはならない.我々も,これまで人類が達成したことがないミッションを達成しよう.他国からの文化の輸入では解決できない問題を解決しよう.我が国の先達が長年に渡って培ってきた,この愛すべき日本文化を未来の世代に伝えていこう.