白川静 氏(漢文学者・古代漢字学者)について

 白川静(しらかわ しずか、1910年4月9日 - 2006年10月30日,享年96歳)は、漢文学者・古代漢字学で著名な学者である.

 http://ja.wikipedia.org/wiki/白川静

 12月1日朝日新聞夕刊1面の,白川静 氏に関する記事は,次のような印象的な一文で始まる.

 「道」という漢字に「首」があるのはなぜか?中国文学者の白川静は読み解いた.
 古代中国で,他の氏族の土地を進むとき,その首をはねて手に持ち,呪いの力で邪霊をはらい清めた所が道だったと.
 白川は漢字のもともとの形を研究し,古代を生々しくよみがえらせた.(途中略)これほど深く突きつめた人は中国にもいない.

 立命館大学を卒業後,立命館中学教諭に.その後,44歳からは立命館大学文学部教授.

 世に知られるまでは,出す本はガリ版刷り.ペンだこは並の大きさではない.みな自費出版で,刊行が決まると妻のツルはこうささやいたという.「耐乏生活よ」と.つるに夫の研究はわからない.しかし価値を信じて疑わなかった.白川が初めて本の印税を手にしたのは岩波新書を出した60歳の時だ.

 字源辞典「字統」,古語辞典「字訓」,漢和辞典「字通」を白川の辞書3部作と呼ぶそうだ.白川氏には120歳まで仕事の計画があったとのこと.

 白川静は遅咲きだったと言われるらしいが,歳を取ってもやるべき事,やりたい事が山のようにあったことが羨ましい.しかも歳を重ねるほど,ボルテージは上がっていったのではないかと想像する.理科系では,少数の例外を除いて見られない傾向である.

 最近,ある人から聞いた.企業でも技術者は一定の年齢に達すると管理職になり,文系の世界に入る.文系の人は,最初から文系の世界で生きて経験を積んでいて,管理職同士で比べたときにその経験と技量の差は大きいと.研究者も同様の事が言えるかもしれないと,最近考え始めている.理系研究者も,文系的教養を身につけるべく,早い内から努力を始めるべきではないかと.

 このブログを書きながら,内田樹氏,松岡正剛氏が書かれた白川静に関する興味深い文章を見つけた.

 最後に,上記文書を入力しながら気がついたこと.Google日本語入力システムだと,字統,字訓,字通,いずれも辞書に入っていて,変換成功.ATOK2009では,字訓のみ変換成功であった.Google日本語入力システム,さすがである.