イルカ・コンサート with 南こうせつ+山本潤子+神部冬馬

本年2月25日につくば市カピオという多目的ホールのアリーナで行われた「40th Anniversry イルカ with Friends」というコンサートのレポートです。出演者はイルカ,南こうせつ山本潤子神部冬馬。以下,コンサートの内容に触れますので,これから同様のコンサートを観る予定という方は,ご注意下さい。

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ライブ by イルカ
「もうひとりのイルカ物語ーなごり雪の季節に旅立っていった夫へ」by イルカ

イルカといえば,最大のヒット作はご存じ「なごり雪」。作詞・作曲は,伊勢正三。「かぐや姫」というフォークグループのアルバム「三階建ての詩」の一曲として発表されました。それをイルカが,まずはアルバムレコード収録,その後,新しいアレンジでシングルレコード発売して大ヒット。おそらくは,日本のフォークソング界を代表する不朽の一曲として人々の記憶に刻まれることになりました。かぐや姫南こうせつ伊勢正三山田パンダ),風(伊勢正三大久保一久),イルカは互いに楽曲提供し合う間柄。私はかぐや姫以来の彼らのファンで,35年以上聴き続けています。

カピオ・アリーナは大きな体育館のような建物。これまで,球技(バレーボール等)や体操の大会,市のイベント等で何度も来たことがありますが,ここでコンサートを観るのは初めて。帰り際に数えたら,およそ,縦方向に32席,横方向に36席の縦長の会場。前方にステージが組まれ,左右に大きなスピーカ。約千席の会場はほぼ満員。私は49歳ですが,客層は私よりも年上が大部分という雰囲気。チケットは昨年の10月頃から発売されましたが,よくぞこんなに集まって下さいましたという気持ち。14:00開場,15:00開演,全席指定。私は発売日に電話でチケット予約,前から5列目,ステージに向かって真ん中よりちょっと右という,かなり好位置。

イルカ ソロ

オープニングからサプライズ。鐘の音が鳴り響いたと思ったら,どこからともなく,イルカの声。何とアリーナ席の横の席から入り,マイクを片手に挨拶をしながら,後ろの席を回ってくる。せがまれる握手に気軽に応えながら。10分くらいかけてやっと,ステージに登壇。バック演奏はアコースティック・ギター,キーボード,テナーサックス(ドラムとベースはなし)。

この広いアリーナ会場で後ろの席からは,イルカの顔が見えにくい。後から思いましたが,おそらくはイルカの心配りで,冒頭に後の席に出向いて直接ご挨拶したんじゃないかと思います。イルカを始めとして,昔からフォークシンガーはしゃべり(今で言うMC)の能力が高い人が多い。ラジオの深夜番組を持っている人,多かったですから。昔からフォークコンサートは,しゃべりの合間に歌が入ると言っても過言じゃないくらい。イルカも若い時から,素晴らしいしゃべり能力。このオープニングでその力は全く衰えていないことを悟りました。

一曲目は「光のとびら」。

全日につくば入りし,リハーサルをしていたそうです。そうか,前日からこの人達とつくばの同じ空気を吸っていたのかと思うだけで,35年以上前からの一ファンはぐっと来ます。

イルカは今年,還暦+1歳。つまり61歳。衣装がサプライズ。AKB級のミニスカート。後の語りで,「もう怖いものありませんから」,「この歳なんだから好きなことやらせて下さい」,「IRK61と呼んで下さい」等々と言っていました。

ウィンドシンセサイザー(電子サックス)&テナーサックス奏者は年配の方でしたが,もしやと思ったら,当たり。イルカご自身で紹介して下さいました。イルカの実父。私は以前,レーザーディスクで発売されたイルカ・ライブを持っていて,そこで出演されていた方。長らくジャズ・ミュージシャンで,美空ひばりのバックバンドの指揮者も務めていたことがあるそうです。

御高齢なので,今はお父様が気が向いたときだけ,バック演奏を務めてくれるとか。今回は,土浦に仲の良いご友人がいるとかで。ラッキー!

以前,イルカとお父さんが最初に共演したとき,キーは何ならできる?と聞いたら,その答は「Any key OK」だったそうです。さすがプロだね,お父さんと,イルカは感動したそうです。お父さんはいつもAny key OKだったね,ありがとう,とも。そして出来たのが次の曲。

2曲目は「Any Key OK」。

つくばで科学万博があったとき,今は亡きご主人の神戸和夫,イルカ,お子さん(=出演者の神部冬馬)と3人で観に来たそうです。(そうですか,あの頃,筑波に来て下さいましたか,ありがとう)

3曲目は「ノエル」。イルカデビュー前に,和夫さんと組んでいた男女デュオ「シュリークス」時代の歌。

4曲目は「海岸通り」。息子さんの冬馬君を呼んで,デュオで。

この曲は「なごり雪」の作者である伊勢正三の作品。冬馬君の妊娠中しばらく,音楽活動を休止。復帰後第一作が「海岸通り」だったそうです。イルカのプロデューサであった和夫さんが早くから決めていたそうで。私はこの曲を,風,イルカのバージョンで,発表以来,今日までずっと聞き続けています。中学時代は友人とコピーに励んで,人前で歌ったりしていました。(私はリードギター&コーラス担当だったけどね)

ここで,今日の友人達を呼びます。南こうせつ山本潤子。こうせつは相変わらずの調子。「あのー,母乳ですか?」。イルカは「ハイ」とのストレートな答え。

よく考えられた構成・演出です。このまま次の冬馬君のソロに入れば,イルカ,その父,その子のファミリーコンサートになってしまう。客は早く,こうせつ,潤子の顔を見たいはず。そこでこの時点で,彼らを呼んで,ご挨拶。

そしてイルカ,こうせつ,潤子は楽屋に下がり,冬馬君コーナーの始まり。

神部冬馬 ソロ

東馬君,驚いたことに,つくばに縁があるとのこと。3.11震災後,音楽活動をしばらく自粛,出だし一番がつくばのクレオという大型商業施設での出前ライブだったそうです。知っていたら,聴きに行ったんだけど。最近,「ミュージックパスポート」というFMラジオ番組(日曜夜9:00〜)を始めたそうで,番組の地方中継を最初に受けてくれたのが「FMつくば」(84.2Hz)だとか。

冬馬君,ソロ1曲目は「一期一会」。お父さん,お母さんのことをストレートに歌っています。偉大なるお父さん,お母さんのことをストレートに歌える。いろいろな葛藤もあるだろうに。素晴らしいことです。

2曲目は「グッドモーニング」。透明感のある声。ソングライティング力も悪くない。良い素質を持っているミュージシャンである事は間違いない。頑張ってね。

山本潤子 ソロ

次は山本潤子のコーナー。イルカと同じく,還暦越え。数年前にイルカと九州を回るコンサートツアーをやったとのこと。「フォーク界のきんさん,ぎんさんと呼ばれるまで頑張ります」

1曲目は「中央フリーウェイ」。ハイファイセット時代の曲,新井由美(結婚後,松任谷由実ね)の作品。私が今でも聞き続けている曲。山本潤子は,フォークグループ「赤い鳥」のボーカルでデビューですが,ハイファイセット時代は,フォーク色よりも,都会的に洗練されたポップな音楽をやっていました。松任谷由実提供の楽曲を多くヒットさせ,それらは今も私の愛聴盤です。この曲に限りませんが,演奏にはジャズ要素がかなり入っています。

それから山本潤子が素晴らしいのは,60超えをしても昔と全く変わらない,いや,深みを増したような歌声。言語化すると,シルバー・ミルキー・ボイスで,ぶれない音程。

2曲目,「スカイレストラン」。これも荒井由美の曲。発表当時,当時,色気を出すのに苦労したとコメント。

その後,「笑顔を見せて」,「卒業写真」,「素直になりたい」。

南こうせつとイルカ

南こうせつとイルカ,二人で登場。1曲目はイルカとデュオで「大きな木の下で」。

イルカとこうせつの掛け合いが続く。この曲は「NHKみんなのうた」のために,二人で作ったそうです。良い曲ですね,良い詞ですね,と互いに褒め合う。歳取ったら褒め合うんですよ。良い服ですね,とか。

イルカ曰く,歳取ったら,楽屋に届くものが変わりました。今回は何と,お線香が届きましたよ。珈琲の香りがするお線香だとか。お線香ですか,いいですね,私の家,曹洞宗のお寺なので,私も好きですよ,はこうせつの弁。

そして死んだ後のお骨の話。イルカのお父さんは海にまいてくれ,だそうです。イルカは「私はお父さん(ご主人の和夫さん)が大好きだから,お父さんと一緒にお墓に入ります」。(仲良くて良いね)

南こうせつ ソロ

イルカが楽屋に下がり,こうせつのソロ。「(イルカさんは)中性のような,女の子のような。あの太ももいいですね。旦那が亡くなってから5年も経っているから,いつか酔わせてやる…」

ソロ一曲目は「妹よ」。かぐや姫時代の曲が続きます。「マキシーのために」,「神田川」。みんなが聴きたい歌を惜しげなく,大放出。

再び イルカ ソロ

衣装を換えて登場。AKBばりのミニスカから一転,ラオスで買ったというロングスカート。

イルカのソロ一曲目はあの曲,「なごり雪」。聴いたことのない,新鮮なアレンジなので,歌が始まるまでは分からなかった程。イルカ曰く,何度歌っても良い歌だそうです。

最近,音楽TV番組「Exile魂」に出たとのこと。「お母さん,歌っていた良かった」

「クスコ」,「ふるさと」と歌って,最後は「共に生きるこの時を」を会場と合唱。

アンコール(全員登場:イルカ,こうせつ,潤子,冬馬)

イルカは再度衣装チェンジ。若い時にトレードマークのオーバーオールGパン。

一曲目はこうせつのリードボーカルで,「うちのお父さん」。

♪春になれば,下がり梅の花が咲きますお父さん にっこり笑う にっこり笑う 明日天気になあれ

このサビを会場と一緒に何度も繰り返しました。「明日天気になあれ」に力を込めて。あんな震災があったけど,今も国中大変な思いをしているけど,みんな元気になあれ,というメッセージを込めて。

そして続いたのは山本潤子リードボーカル,「翼を下さい」

♪今 私の 願い事が 叶うならば 翼が欲しい … この大空に 翼を拡げ 飛んで行きたいよ 悲しみのない 自由な空へ 飛んでいきたいよ

明日天気になあれ のリフレインの後 この曲を山本潤子の歌声で。中学時代,何度も歌ったあの歌。胸に染みました。感,極まりました。涙がこぼれました。

最後にイルカのリードで,「まあるいいのち」。

♪みんな 同じ 生きているから 一人に一つずつ 大切な命

涙させた後,一番最後に 大切な命 でお別れ。良く出来ています。出来過ぎなくらいです。

15:00開演で,18:00終演,休憩なし。あっという間の3時間。こんなに時が経つのが早かったのは久しぶり。もっとずっと続いて欲しい。終わらないで欲しい。

すみずみまでよく考えられた,構成,演出。たっぷりの満足感。さすがです。期待以上でした。

拙ブログ「ライブ by イルカ」ライブ by イルカ
で紹介したイルカのライブアルバムは,私が今でも聴き続けているアルバムです。1976年発表だから35年以上になります。イルカのコンサートを聴いたのがこの日が初めて。35年間,この日を待ち続けました。35年以上,この日を待った甲斐がありました。ありがとう。

私が思い描いていたイルカのイメージは,長い年月を経ても,ちっとも変わらない。拙ブログ「もうひとりのイルカ物語ーなごり雪の季節に旅立っていった夫へ」by イルカで初めて公開された,ご主人との凄まじい闘病生活を経ても,少なくとも音楽に没頭するイルカの姿は変わらない。若い時のコンサートを観ていませんが,むしろ彼女が放つオーラは勢いを増しているかもしれない。太陽のような,生命力を育むようなオーラ。南こうせつ山本潤子,息子の東馬君,お父様をも明るく照らし出すようなオーラ。千名を超える観客にも降り注がせことができるオーラ。歳を取ることは恐くない。そんなことを,あそこにいた皆が感じ取ったことと思います。