パブリック vs. SNS

マスコミとWeb 2.0、そしてSNS

本日1月24日(火)の朝日新聞朝刊で、政治家のTwitter利用に関する記事が出ていた。それを読みながら、ふと思った。既存マスメディアは今も、ネット文化との付き合いを暗中模索している。Webには比較的早く対応した。というか、せざるを得なかった。しかし今も困り気味なのは、いわゆるWeb 2.0現象。「権威」なき一般人が情報発信を始め、その中から人気・有用コンテンツが出てくる、検索エンジンによって人気構造が見出される、その中を見て歩くことに人々が多くの時間を使い始める現象。ロングテールの中から価値が見出される現象。Twitter現象もその一部。

最近ではマスメディアもかなり、それらの現象に慣れてきた。しかし、困りものだと思っていると思われるのがSNS現象。端的にはFacebookWeb 2.0時代は、情報はパブリックな世界で情報公開・共有が行われていた。マスメディア側も発信・受信が同様にできる。一般人とほぼフラットなグラウンドに立たねばならないのがちょっと困った所。しかしSNSはかなり困る。ユーザ各自が「独自チャンネル」を作り上げていて、その中にマスメディアが入り込むのは容易でない。その一方で、ユーザは独自チャンネルとパブリックな世界を自在に行ったりきたりする。SNSは、膨大な独自チャンネルが渾沌として存在する、パブリックではない世界。

グーグルとSNS

現在のところは、SNSとの付き合いがよく分からないので、マスメディアもあまり取り上げない。Web 2.0のところまで。この点は実は、ネットの「覇者」とつい最近まで思われていたグーグルも同様。SNSという新しい大きな世界が現れた今では、グーグルとマスメディアは「同業者」のよう。共にパブリックな情報世界を構造化、編集、ブラウズ可能にしている。違うのは既存マスメディアが手作業、人間の知能ベースだったのに対して、グーグルは徹底した機械化を頑張ったところ。創業者二人が作った「ページランク」概念が象徴的。

グーグルはFacebookになりたいと思っているようだが、それはおそらく、すごく難しい。なぜか?グーグルの本質は「パブリック」にこそあるから。

グーグルのメールサービス、Gmailはパブリックじゃない情報世界では?そう、確かにメールのコンテンツは、プライベートなもので、原則、そのユーザしか見られない(そこにグーグルは広告を挿入してくるけど)。Gmailのメールは、従来からのインターネットメールで、誰にでも送れる、誰からも送られるのを基本とする世界。つまり、メールの送受信は、オープン、すなわちパブリックなのが基本。SNSの世界はそうじゃない。送受信する人を限定するのが基本の世界。

梅田望夫さんの本によると、グーグルはこんなことを言っていたそうだ。「世界政府があるとして、それに必要なツールは我々が作る」。政府は公的、すなわちパブリックなものの典型。個人のプライベート空間には入り込まないのが基本。SNSは、公的でない、私的な世界。

Google CEOのエリック・シュミット氏は、こう言ったそうだ。SNSはあるのが分かっていたが、入りそびれていた。そしてGoogle+SNSに参入。グーグルの賢い人達がSNSの存在を知っても、すぐには参入しなかったのには訳がある。それはグーグルのミッションとして、自然な世界ではなかったから。

おそらく、上記のような考察に、グーグルはまだ辿り着いていないのかもしれない。いや賢いグーグルの人達のこと、既に辿り着いている可能性はある。もしそうだとすれば、Google+の「次」を練っているか、「別の道」を練っていることだろう。