トイレの神様 by 植村花菜

 トイレの神様(歌 植村花菜,作詞 植村花菜山田ひろし,作曲 植村花菜)という歌,植村花菜というシンガーソングライター,大晦日紅白歌合戦で初めて知りました.

 上記の動画は2011年1月3日夕刻で,600万回以上の再生回数.アップロード日は2010年2月17日,キングレコードから.歌詞は例えばこちらでご覧頂けます.こちらはコード入り.

トイレの神様(DVD付)

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 フォークソングという言葉は,今はほとんど聞かれなくなりました.今の若い人はきっと知らない言葉.素朴なコード進行,親しみやすく,歌いやすいメロディ.短編小説もしくは一枚の絵のような歌詞.私のようなアラ・フィフティで,フォーク狂いだったおじさんには,初めて聞いた歌でありながら,懐かしい気持ちが沸き起こります.
 それと共にこの歌,いくつか考えさせられました.

どうして「トイレの神様」なのか?

 「トイレ」という語を歌のタイトルに使うのはとても珍しいことです.実際,アマゾンの「ミュージック」カテゴリーで「トイレ」で検索するとトイレの花子さんくらい.

 歌詞サイトを検索しても,非常に珍しいということがわかります.
 おそらく海外でもトイレを題目に入れた歌は非常に少ないのではないかと予想します.
 普通であれば,タイトルは「おばあちゃん,ありがとう」,「おばあちゃんと女神様」,「キレイな女神様」くらいかな.
 でもこの歌では「トイレ」が重要な役割を果たしていること,作詞者の強い希望があり,このタイトルになったのかなと推測します.(レコード会社のインパクトある戦略ということも全く考えられなくはないですが…)

「トイレの女神様」は嫌なことを子供にさせるための方便?

 ネットを眺めていると,いろいろな意見が飛び交っているようです.例えば,「『トイレの女神様』は,子供に嫌なことをさせるための方便なんだよ」.
 「トイレの女神様」がどこかの地方の言い伝えか,歌中のおばあさんの思いつきなのか,知りません.しかしいずれにせよ,そこには深い「知恵」を感じずにはいられません.
 トイレを掃除すること,嫌なことかもしれないよね.でもトイレを黙々と,あるいは嬉々として掃除をする人を見たら,どう思うだろう.おそらくどんな人でも,心のどこかに,ありがとう,あなたのお陰です,あなたに感謝します,という声がするのを感じるよね.その気持ちが,トイレを掃除をする人をキレイに見せてくれるはずです.
 トイレだけではありません.嫌なことを率先してくれる人,有り難いよね.時には涙がこぼれるほどだよね.そういうことを,人生経験豊かな人は知っています.
 こんなことを長々と言葉で説明するのは野暮.それに小さな子供にわかってもらうのは簡単でないかもしれない.トイレをキレイにしたら,トイレの女神様がべっぴんさんにしてくれる.わかりやすい表現だよね.

どうして「もう帰りー」なのか?

 2年ぶり,病床のおばあさんに再会したら「もう帰りー」って言われた.勇気を出して会いに来たのに.もっと話したかったのに.
 おばあちゃんは,あなたの顔を一目見るだけで十分だった.いや,たとえ一目見ることがなくても,おばあちゃんは恨むこともなかったでしょう.おばあちゃんは,伝えられることは伝えた.もう伝えられることは何もない.あなたが元気にやっていてくれれば,それで十分.あなたの生活を乱したくない,邪魔をしたくない.私のことはどうでもいいから,あなたが幸せになれるよう,あなたの生活を一番に考えなさい.それが私にとって,一番嬉しいことだから.
 それをわずか一言,生気を振り絞って伝えた「もう帰りー」に込めた.
 そんな気がしてならないのですが,こんなことをいちいち文章にしてしまう私はとっても野暮な人です.おばあちゃん,ごめんね.