ハンバートハンバートとアイリッシュフィドルチューン

 昨日Twitterで,ハンバートハンバートという男女デュオバンドのことを教えてもらいました.
 Wikipediaによると,1998年結成,2003年ミディよりメジャーデビュー.男女デュオで,

  • 佐藤良成(さとうりょうせい)ボーカル・ギター・フィドルマンドリン・作詞・作曲.神奈川県出身.
  • 佐野遊穂(さのゆうほ)ボーカル・ハーモニカ.東京都出身.

 ホームページはこちら.やっている音楽はアイリッシュアイルランド民謡)+カントリー+フォークという感じ.こんな素敵なグループを長らく知らないとは,不覚でした.
 ホームページのトップで現在,二人のデュオ映像が見られます.佐藤良成がヴァイオリンで伴奏しながら,コーラスを付けるという難易度の高い技を見せてくれます.歌詞もメロディもシンプルですが,ボーカルと演奏のうまさ,そしてアイリッシュ等の伝統音楽の深みが,彼らの音楽を魅力的なものにしているように思います.
 昨日はTwitterでハンバート情報が飛び交い,いくつかの演奏を教えてもらいました.

 上記の演奏はYouTubeでの再生回数が現在約77,000.多くの人に愛聴されているのがわかります.佐野遊穂さん,ちょっとハスキーが入った,よい声をしています.歌う姿もとても魅力的.バックで外国人ヴァイオリン3本とハープがハーモニーを奏でています.(フィドルというより,ヴァイオリンという感じの演奏と感じました)
 もう一つTwitterで教えてもらったのが次の演奏.

 ライブハウスでのエンディングのようです.こちらは前の2曲と曲想ががらりと変わり,賑やかな演奏.メンバー紹介も兼ねてソロを各楽器に回していきます.フィニッシュは,典型的なアイリッシュフィドル・チューン.
 アイルランドと米国の伝統を背景としつつ,しっかりとした自分達のオリジナリティを備えています.

ブルーグラスアイリッシュフィドルチューン

 生き物と同じように,音楽も,いろいろな種が混じり合いながら進化を遂げています.米国民謡である,フォーク,カントリーはブルーグラスという祖先音楽をもち,ブルーグラスアイリッシュという祖先音楽を持ちます.フォーク,カントリーは日本でも広く紹介されていると思いますが,ブルーグラスはあまり知られていないでしょう.ブルーグラスアイリッシュフィドル・チューン的な曲を一つご紹介しましょう.Soldier's Joyという曲.

 まずはフィドルによる無伴奏演奏.

 米国フォークの源流には,ドックワトソンという巨星がいて,この人が,フィドルの速弾きをアコースティック・ギター(以下ギター)で演奏し始めました.

(前半がSoldier' Joy,後半はRagtime Annie)
 彼がドックワトソン・スタイルと呼ばれ得るギターの速弾き法を開発するまでは,ステール(鉄)弦を張ったギターは,米国民謡では専らコードストロークを中心とする伴奏が主体でした.カーターファミリーというファミリーグループが開発した,カーターファミリー奏法で,低音弦(4-6弦)のメロディ,高音弦(1-3弦)でコードストローク伴奏を同時に弾く奏法が開発され,そして,上記のようなドックワトソン・スタイルが登場します.ドック・ワトソンはギターの達人であると共に,トラディショナル・フォークの超有名なヴォーカリスト.盲目ですが,盲目であるかどうかは語られません.

 そして最後に日本のプレイヤーによる,極上のライブ演奏を紹介しましょう.典型的なブルーグラススタイル.フラットマンドリン,5弦バンジョー,ギターがソロを取ります.

 フラットマンドリンは,弦の数,チューニングが,フィドル(ヴァイオリン)と同じ.奏法は異なりますが,フィドルチューン(フィドルの曲)を比較的ダイレクトに弾けます.5弦バンジョーはギターと同じように見えるかもしれませんが,チューニングが全く異なります.一般的なのは,オープンGチューニング.開放弦で,Gコードの音が出ます.ここでの演奏はメロディックスタイルという奏法で,難易度の高い奏法です.ギターは先のドックワトソンスタイル.
 この演奏から,アイリッシュアイルランド)とカントリー(米国)が混ざったフレーバーを感じ取って頂ける思います.
 演奏しているナターシャーセブンについては書きたい事が山ほどありますが,稿を改めて書きたいと思います.

追記

 上記を書いた後に,上記ナターシャセブンのレコード(シングル盤)を取り出して,ライナーノーツで演奏者を確認してみました.(はっきりとは書いてなくて,一部は私の想像です)

  • マンドリン城田じゅんじ
  • バンジョー:進藤さとひこ(当時,準メンバーになっていたと思います)
  • ギター:坂庭しょうご(明記がないのですが,演奏スタイルから私が想像)
  • ベース:丸田(助っ人)

 今回調べるまで,バンジョーがきれいな秀逸なメロディックスタイルで弾いているので,てっきり城田さんが弾いていると思っていた.マンドリンは,城田さんの感じがするなとは思っていたが,同時には弾けないので(同時に音が鳴っている)それはないと思っていて,てっきりマンドリンも助っ人と思っていた.