サイモン&ガーファンクル「ボクサー」の夢のような演奏

 今回は,皆さんが聴いたことがあるアメリカの曲で,おそらくあまり知らない類の音楽を紹介しましょう.

サイモン&ガーファンクルの「ボクサー」オリジナル

 サイモン&ガーファンクルの「ボクサー」という曲があります.時代を超えて聞き継がれていく名曲でしょう.歌詞,曲,編曲,演奏,歌唱,すべてが素晴らしいと思います.

 この曲の歌詞は意外と難しく,タイトルから想像力を働かせてこの歌詞の内容を想像するのは簡単ではないでしょう.歌詞(和訳付き)は例えば,こちらにあります.
 この歌詞を見て,唄を聴けば,楽曲の素晴らしさを改めて認識できると思います.

アリソン・クラウス,ショーン・コルヴィン&ジェリー・ダグラスらによるライブ版

 さてここからが本題.下記のYouTube画像は,ポール・サイモンが第一回ジョージ・ガーシュイン賞したときの記念コンサートで,アリソン・クラウス(右ボーカル)らがカバーした演奏.これが超素晴らしいです.おそらく,「ボクサー」のカバー演奏で,最高の出来の一つだと思います.

 米国には,ブルーグラスという分野の音楽があります.カントリーミュージックは日本でも広く紹介されていると思いますが,ブルーグラスはあまり知られていません.ブルーグラスはカントリー,フォークの源流となる古くからのアメリカ音楽.アメリカでは,今でも脈々と受け継がれていて,スターミュージシャンがいます.ブルーグラスは,唄のコーラスと速弾き演奏に特徴があり,楽器演奏が非常にうまい.ボーカルだけのボーカリストはまれで,通常,ボーカリストもよい演奏をします.
 ブルーグラスは元々男性ミュージシャンが多いのですが,女性ミュージシャンも現代では少なくなく,アリソン・クラウスはその筆頭に位置する一人.アリソン・クラウス&ユニオン・ステーションというバンドのリーダーを務めています(今でも活動しているかな?).このバンドには,もう一人のスタープレイヤーがいます.それが,この映像でドブロギターを弾いている,ジェリー・ダグラス.ドブロギターは金属板を使った特殊なギターで,映像のように横にして,ハワイアン音楽でよく見るスチールギターのように弾きます.聴けば,「華」のある彼のハイテク演奏がわかってもらえると思います.
 アリソン・クラウスともう一人の女性歌手,ショーン・コルヴィンのハーモニーの素晴らしいこと.鳥肌が立つような美しさです.
 間奏の所で,アリソン・クラウスフィドルを弾いています.彼女はフィドルの名手でもある.この間奏は,トランペットや,フラットマンドリンブルーグラスでは底が平らのマンドリンを使います),アコーディオンとハーモニーを織りなしていますが,その美しさにうっとり.
 そして驚くべきは,バックでブラシでドラムを叩いているのが,かのスティーブ・ガッドアメリカ音楽ファンでスティーブ・ガッドの名前を知らない人がいたら,是非覚えておいて下さいね.彼をナンバーワン・ドラマーと呼んで異を唱える音楽ファンはあまりいないと思います.スティーブ・ガッドポール・サイモンや第一次再結成時のサイモン&ガーファンクルのツアーメンバーを務めていて,その関係で呼ばれたのかもしれません.とにかく,S&Gの「ボクサー」を,アリソン・クラウス,ジェリー・ダグラス,そしてスティーブ・ガッドで,このような超高品質演奏で聞けるとは,夢のようなことです.
 上記映像のオリジナルは下記DVDと思われます.私,大部前から,聞き込んでいます.

ポール・サイモン・アンド・フレンズ ~第一回ジョージ・ガーシュイン賞授賞記念コンサート~ [DVD]

ポール・サイモン・アンド・フレンズ ~第一回ジョージ・ガーシュイン賞授賞記念コンサート~ [DVD]

 今回検索して,ブルーレイ版が出ている事を知り,動揺しているところ(微笑).
Paul Simon & Friends: Library of Congress [Blu-ray] [Import]

Paul Simon & Friends: Library of Congress [Blu-ray] [Import]

追記

 本ブログに関するTwitterでのやりとりの一部です.

RT @mitapee: @kzhk 1989年,1996年にグラミー賞を受賞していて、1996年のA few small repairsは良いアルバムだと思うのですが、妙に暗い、などで日本ではあまりウケていなかったりします。好みが分かれそうです。

加藤:.@mitapee グラミー賞受賞者でしたか.ただ者でない気配を漂わせていますが,なるほど.米国はグラミー賞がうまく機能していますよね.幅広いジャンルでミュージシャンのよい励みになっているように思われます.

RT @mitapee: @kzhk はい〜♪。ちなみに、先のThe BoxerのS&G、解散後のP.サイモンも「恋人と別れる50の方法」でやっぱりグラミー賞です。ですので、お気づきのようにブログのあのカバーはアリソンクラウスもグラミー賞受賞者(しかもR.プラントと!)他すべてがグラミー賞だったのでした。

RT @mitapee: @kzhk ガーシュイン賞で、アリソン・クラウス、ジェリー・ダグラス、スティーブ・ガッド、ショーン・コルビン全員がグラミー賞受賞者がバンドを務めて、同じく受賞者の曲をカバーする。未踏スパクリが、メタPMのソフトをアレンジするような感じかも。 @mitapee

セントラルパークコンサート

 「ボクサー」はサイモン&ガーファンクルがセントラルパークで再結成コンサートをやったときの最終曲.この演奏も超名演ですよ.バックを,ニューヨークの超一流ミュージシャンらが支えています(超がちょっと多いね).ドラムがスティーブ・ガッド,キーボードが(故)リチャード・ティー.バックバンドとS&Gが織りなす至高の演奏です.
 

 アリソン・クラウスらの演奏もそうですが,どうしてライブの一発録りでこれほどの超高水準演奏が録れるのか.しかも彼らは,淡々と,当たり前のように演奏しています.一流の世界の凄みを垣間見られます.

セントラルパーク・コンサート

セントラルパーク・コンサート